2021-08-04

夢見る名古屋の才能たちが本格3DCGアニメに進出!
「シキザクラ」立役者に聞く制作秘話

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話す人たち

  • 中京テレビ放送 総合編成局総合編成部 兼
    ビジネスプロデュース局 専門エグゼクティブ
    河原 理雄さん
  • 株式会社サブリメイション
    「シキザクラ」アニメーションプロデューサー
    横田 一平さん

東海エリアを舞台に展開する近未来ヒロイックアクションアニメ「シキザクラ」は、東海エリアのスタッフを中心に制作された初の本格的3DCGアニメーションです。これまで名古屋ではできないと思われていたアニメ制作を実現しようと思ったのは何故か、そしてどうやって完成までこぎ着けたかを中京テレビの河原理雄さんと、サブリメイションの横田一平さんにお伺いしました。

―この作品は、初の「東海エリアのスタッフを中心に作り上げたアニメーション」ですが、なぜ東海エリアでアニメ制作を行うことになったのでしょうか。こんな大変なことをやろうとするなんて、もともとアニメがお好きで、思い入れがあったとか…?

河原さん: いやー…それが全く。わざわざ名古屋でアニメを作るぐらいだから、よっぽどのアニメ好きかと思われるでしょうが、僕自身はこれまでアニメ自体をあまり見たことがなく、ましてや実際に作ってみようなんて考えたこともなくて…。最初のきっかけも、必ずしも「アニメ」ではなかったんです。

―それは意外ですね!

河原さん: 僕は中京テレビ放送のイベントの部署におりまして、これまで浅田真央ちゃん主演のアイスショー「THE ICE」や市川海老蔵さんの御園座歌舞伎興行、チームラボと放送局がコラボした初めての子ども向けイベントなど、(中京テレビとして)初挑戦となるイベントを企画してきました。

こうした企画を立てるにあたっては、視野を広げるため、普段からジャンルを問わず、全国各地のイベント視察が欠かせません。その中で、今回のアニメ制作の大きなきっかけとなったのが、2013年4月に幕張メッセで開催された「ニコニコ超会議2」です。

―「踊ってみた」やコスプレ、ボカロ、ゲームといったサブカルチャー系のイベントですね。どんな印象を持たれましたか?

河原さん: とにかく衝撃的でした。まず、会場に入る前から圧倒されたんですよ。テレビを見なくなった世代と言われる10代20代が、すごい熱量でわんさと集まっている。なんだこれは、という驚きです。しかも、そのコンテンツには、これまで中京テレビで扱っているものはひとつもなかった。

若い世代をこんなに熱くさせているポップカルチャーを、テレビ局では何も扱っていないなんて…と強い焦りを感じたのです。

―そこからアニメ…ですか?

河原さん: 焦ったものの、その時点では何をどうしたらいいのか分からず、まずはポプカル事情に詳しいDJのYO! YO! YOSUKE (ヨーヨーヨースケ)さんのもとへ相談に行ったんです。一緒にやろうと盛り上りましたが、しばらくは何をするのが良いのか試行錯誤している状態でした。急展開があったのは2年半後。

なんとアニメCGの世界で非常に評価の高いサブリメイションさんが名古屋にスタジオを構えるというニュースが飛び込んできて「スゴイ!会いたい!」と盛り上がり、念願かなって会うことができて、そこから一気にアニメ制作へと繋がっていったんですよ。

―すごい偶然が重なったのですね!

河原さん: サブリメイションさんは『ラブライブ!サンシャイン!!』や『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』など人気作の3DCGを手掛けているだけあって、現場もまた壮絶で熱くて。「とにかく、これはすごい出来事だ!動かなきゃ!」ということで、早速、アニメ制作の現場を長期的に追いかけるドキュメント番組を制作して、無料動画配信サービス・Chuun(チューン)で配信することにしました。

その時は、外部として追いかけるだけでしたが、この熱い現場の雰囲気にだんだん触発されて、名古屋でオリジナルアニメの制作に携わりたいと思うようになったんです。

―名古屋でアニメ制作って…人集めだけで大変じゃないですか?

横田さん: それが、スタッフ募集にすごい数の応募がきて驚きました。業界的には、名古屋の専門学校の生徒は、質が高いとうわさにはなっていたんです。東京では、なかなか人材を確保できないのが悩みだったんですが、これなら大丈夫だと思いました。

河原さん: しかも、みんな目がすごく輝いていて。…そりゃあそうですよね、初めて見るアニメの現場が「ヤマト」なんだから。「すごい!すごい!」とみんな興奮しっぱなしで。今回応募した人たちの中には、「アニメの仕事は、東京しかないので、せっかく専門学校を卒業しても様々な事情で夢を諦めざるを得なかったけれど、名古屋で作れるのならもう一度夢を叶えたい」と思って来た人たちが多かったと聞いています。

横田さん: どの人もアニメ制作に対する熱意が感じられて、こんなに期待されていたんだとこちら側も身の引き締まるような思いでしたね。

―「シキザクラ」は豊田市小原に咲く「四季桜」ですよね。なぜこの四季桜をモチーフにしたのでしょうか。

河原さん:「東海エリアを舞台としたアニメを作ろう」ということで、YO! YO! YOSUKEさんの声掛けでアニメに興味のある地元の人たちを集めて、月1回のミーティングを行っていました。そのアイデア出しの時に「四季桜」を出してくれたメンバーさんがいて、春の花の定番である桜と秋の紅葉がここでは一緒に観られると聞き、とても興味が湧いたんです。

―実際に観に行ったんですか?

河原さん: はい、でも観てから決めたわけではありません。情景が描けるような言葉の響きや背景から、最初に「これいいね!」とみんなが気に入りまして、実際に行けたのは2017年11月のロケハン時だったんですけど、想像以上に素晴らしくて不思議な光景でした。

美しくて異次元な感じや、どことなくミステリアスな感じが、普通の高校生として暮らす現世と、パワードスーツを着て戦うオニの世界のようにも思えて「これしかない」と再確認しました。つまりこの作品は、現世の少年が、オニの世界での戦いを通じて成長していく物語であり、シキザクラとはその象徴なんです。

―横田さんは、2018年に公開された『モンスターストライク THE MOVIE ソラノカナタ』では制作プロデューサーを務められていたそうですが、まとめる立場として今回のシキザクラチームはいかがでしたか?

横田さん: 一言では表せないほど、ものすごく大変でした(笑)。アニメはほぼ東京で作っていますから、東京流の作り方というか、決まったやり方ってあるんです。そんな中で、シキザクラの名古屋チームは、ほぼ全員が初心者になるので、東京のやり方なんかひとつも通じないんです。

東京だったら言葉ひとつで済むことも、細かく説明したり指示したりしないといけないですし、覚悟していたとはいえ、どういえば分かってもらえるんだろうと途方に暮れることもありました。
でも、みんなやる気と情熱がすごくて、例えば東京だったら「もう一回やり直そう」と言えば「時間もお金もかかるし…」と実際あまりいい顔はしてもらえない時もあるんですけど、名古屋では「何回でもやらせてください!」と、とにかく熱心。いいものを作りたいという情熱で何度も食らいついてくる。だから、ものすごく成長するし、結果的に最初よりもすごく良くなっているんですよね。僕自身も東京のやり方にこだわらずに、初めから名古屋らしいやり方を作っていけばいいと、いろいろなことを試しました。そういう意味でも、これまでにないアニメになったんじゃないかと思いますね。

―関わりの中で、横田さん自身の名古屋や愛知県の印象は変わりましたか?

横田さん: はい、変わりましたね。正直言って、シキザクラプロジェクトが始まるまでは名古屋の印象はほとんどなかったんですが、月の半分、名古屋にいる暮らしをしていると、この土地の面白さに徐々に気づいてきました。名古屋って、歴史のある場所が、新しいものが生まれる場所と共存していて、不思議な雰囲気がありますね。そういうのも、アニメのテーマに合っているなと感じます。

河原さん: それは名古屋にどっぷり漬かっている地元の人にはわからない部分ですけど、シキザクラではその魅力がいっぱい盛り込まれているんです。実は、僕の家の近所にある公園も出てきて、めちゃくちゃテンション上がりましたからね!そんな見慣れた景色がきっといくつか見られると思いますので、地元の方はきっと何倍も楽しめますよ。

―名駅周辺とか愛知の観光地とか、それから中京テレビも登場するそうですね。

河原さん: はい、中京テレビは爆破シーンで登場します(笑)。戦闘ものなので、どうしても建物が壊れたりするのですが、各スポットにお願いはするものの、なかなか爆破の許可は下りなくてですね…独断で進行させていただきました(笑)。

とはいえ世界配信される作品ですので、サブリメイションさんのテイストで名古屋だけではなく東海地方全体をとてもカッコよく描いてくださって、また違う魅力に気づかせてくれました。

―そしてアニメもいよいよ完成し、10月9日の初回放送を待つばかりですが…感想はいかがでしたか?

河原さん: 僕が一番感動したのは、完成した時よりも初めてCGシーンを見た時でしたね。主人公がリアルに動くシーンを見て、すごいことに挑戦しているという興奮でドキドキしました。そんな感動がいっぱい詰まっているのが「シキザクラ」だと思います。じっくりと時間をかけ、丁寧に作っていった分、クオリティも素晴らしい。このプロジェクトを皮切りに、これからアニメ制作が名古屋に根付いていってほしいと思っています。

横田さん: 東京と名古屋をつなぐ中で、緊急事態宣言の混乱もあり、本当に終わるのかと思った時期もあったので、完成を迎え、皆さんの熱い気持ちを形にできたことが何よりうれしかったです。

―見どころを教えてください!

河原さん: 360°まわるカメラワークのアクションシーンです!毎回ワクワクして頂きたいので、各回に趣向を凝らしたアクションを盛り込んでいます。3DCGならではのスピード感やダイナミックな迫力にこだわっていますので、ぜひ楽しみにしてほしいです。
そして、登場する女の子の可愛さも見どころですね。

「ラブライブ!」も女の子を可愛く描くことを大切にしていますが、その技術を「シキザクラ」にもしっかり踏襲しています。パワードスーツのカッコよさ、コスプレしたくなる衣装など、アニメの持つ魅力も満載しました!このアニメが多くの人に受け入れられ、愛されて、続編ができたらうれしいですね。

横田さん: 岡崎出身の人気ユーチューバー・東海オンエアのメンバーや、佐藤二朗さんも登場します。毎週土曜日25時55分から放送の「シキザクラ」をぜひご覧ください!

アニメ「シキザクラ」(テレビシリーズ12話)

【ストーリー】
近未来の東海地方は、オニと呼ばれる異次元からの侵略者の脅威にさらされていた。
高校生の『三輪 翔(ミワ カケル)』は、 異界から現れ人を喰らう『オニ』と、パワードスーツとの争いに巻き込まれる。人に取り憑き、現世に顕(あらわ)れようとするオニ。人々をオニから守ることができるのは、古代の秘術と最新技術が融合したパワードスーツ『ヨロイ』のみ。翔は、ひょんなことからパワードスーツを身にまとい、オニと戦うチームのイレギュラーなメンバーとなる。ヒーローになる決意をした翔は、世界を救う宿命の巫女『明神 逢花(ミョウジン オウカ)』を守りオニと戦う。
仲間たちと友情を深め、相棒のオニ「イバラ」とも心を通わせながら、翔は少年らしく悩み、人として成長していく。その中で明らかになるダークな真実。翔の決断は世界を救えるか!?

【放送情報】
中京テレビ 毎週土曜日 深夜25時55分~
初回放送:2021年10月9日(土)

日本テレビ 毎週火曜 深夜25時29分~
初回放送:2021年10月12日(火)

BS日テレ 毎週土曜 深夜24時33分~
初回放送:2021年10月16日(土)

その他、秋田放送、福岡放送、熊本県民テレビでも放送!
※放送時間は変更になる場合があります。

アニメ「シキザクラ」公式HP

「シキザクラ」ロケ地巡りMAP

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