話す人たち
- 映画監督
前田 直樹さん - プロデューサー
山﨑 歩さん
- 豊川市役所
企画部秘書課広報広聴係長
杉本 陽平さん - 豊川市観光協会
秋山 峰輝さん
オール三河で撮影された映画「マリッジカウンセラー」は、渡辺いっけいさん(豊川市出身)、松本若菜さん、宮崎美子さんらが出演する、結婚相談所の仲人たちの物語。2022年9月16日(金)より愛知県で先行公開され、2023年1月13日(金)より全国で順次公開されます。劇中で結婚相談所「とわえもわ」として登場する古民家「千両宝辺(せんりょうほうべ)」にて、前田直樹監督(刈谷市出身)、山﨑歩プロデューサー、豊川市広報広聴係長の杉本陽平さん、豊川市観光協会の秋山峰輝さんに、ロケ地の魅力や映画制作の思い出をうかがいました。
―オール三河(豊川市、岡崎市、蒲郡市、豊田市、西尾市、豊橋市)での撮影ですが、ロケ地に選んだきっかけは何でしたか。
前田監督: 長編本編の前に、短編の完成披露試写会を(出身地である)刈谷市で行いました。短編は都内や神奈川で撮っていたので、長編もそのつもりだったのですが、刈谷市へ行った際、関東でロケ地探しに難航していたペデストリアンデッキを目にして、「ここ愛知県で撮れるのでは?」と思ったのがきっかけです。
そこから、愛知県のいろいろなところを見せていただき、多くの魅力的な場所に出会えました。愛知県を舞台に脚本を書いていたわけではなかったので、脚本をロケ地に寄せていきました。
―監督がロケ地に選ぶ条件はどんなことですか。
前田監督: 映画はフィクションではありますが、「この物語がいかにリアルに見えるか」ということは、いつもこだわっています。基本的には、脚本に合ったロケ地を探しますが、今回のようにメインとなるロケ地が決まったとき「脚本をロケ地に寄せていく」ということもあります。
例えば、劇中に出てくる結婚相談所「とわえもわ」では、千両宝辺の造りに合わせて動線などを大きく変えました。家屋の中が魅力的なので、中でのシーンを厚く撮りましたね。豊川市で十和子が営む結婚相談所だったら……というイメージでつくり上げたので、映画を観た方が同じように感じてくれたら嬉しいですね。
―ロケ地で特に思い出深い場所はどこですか。
前田監督: 千両宝辺さんですね。準備を含めて一か月近くずっとお世話になっていたので、はじめは「よろしくお願いします」だった挨拶が、いつの日からか「ただいま」になっていました(笑)。ここのぬくもりが映画のテイストそのものになっていて、豊川市にある「とわえもわ」が撮れたのは、このロケーションのおかげだと思います。
今日、久しぶりに訪れて、とても懐かしい気持ちになりました。撮影のセットがなくなった今でも「とわえもわ」の雰囲気が感じられます。
―愛知県でのロケで印象に残っていることはどんなことですか。
前田監督: 本編のスタッフが別の現場で再会した時に「あの時のお弁当、美味しかったよね」という話で盛り上がったそうなんです。現場で起きた出来事などが話題になることはあっても、ロケ弁の話で盛り上がるというのはあまり聞いたことがなかったので、面白いなと思いました。
ロケ弁というと、油もの・がっつりというイメージが強いと思いますが、今回のロケでいただいたお弁当は、地元の食材が使われ、バラエティー豊かで、豪華さもあって、とても美味しかったです。
秋山さん: 今回のロケでは豊川市観光協会に加盟している13軒のお店にご協力いただきました。美味しいと言っていただけるのは素直に嬉しいですし、誇りに思いますね。
―豊川市観光協会さんとのやりとりで印象に残っていることはありますか。
前田監督: リアルさを追求していたので、制作サイドからだけでなく観光協会さんにもお願いして、愛知県ゆかりのものをいろいろとご用意いただきました。劇中に出てくる茶菓子も地元のものですし、結衣がしている刺繍は名古屋市のオリムパス製絲さんのものです。昭和レトロなグラスはアデリアレトロというシリーズで、岩倉市の石塚硝子さんにご協力いただきました。
あとは豊川市のバラも!映画では一日のシーンですが、撮影上一日では撮りきれなかったので、何回か用意していただきました。ロケ中、僕が泊まったホテルの部屋はバラのいい香りに包まれて……、朝目覚めると、バラの優雅な香りとともに部屋に置いてある「とわえもわ」の看板が目に入る、不思議な部屋でした(笑)。撮影中だけでなく、制作発表や完成披露試写会の度にバラを手配していただき、とてもありがたかったです。
杉本さん: とよかわブランドである「とよかわバラ」は、出荷量日本一です。喜んでいただけるのはとても嬉しいですね。
山﨑プロデューサー: 結衣の車に「いなりん(キツネと豊川いなり寿司を合体させた豊川市の宣伝部長)」のマスコットがぶらさがっているのは、観光協会さんにお世話になったせめてもの恩返しというか、僕たちが自発的に行ったことです(笑)。映像の中に愛知県ゆかりのものを探す、そんな楽しみ方もいいかもしれません。
―愛知県のどんなところを魅力に感じますか。
前田監督: 車で一時間くらいで海も山も行けるというのは、すごくいいなぁと思います。また市と市の垣根を超えて、三河全体で協力していただいたおかげで、映画がすごく豊かになったと思っています。三河という広大なセットの中で僕らが好きに撮らせてもらったという感覚です。
山﨑プロデューサー: 脚本自体は関東前提で作っていましたが、僕は親が転勤族だったこともあって、ロケ地に対するこだわりはそれほどなかったんです。監督が刈谷市出身、主演が豊川市出身ということであれば、愛知県で全然アリだと思いました。実際に来てみたら、すごくいいところがたくさんありました。監督がおっしゃったように、豊川市のみならず、各市の連携がすばらしかったです。豊川市にないものは、何が何でも市内で完結させようとゴリ押しするでもなく(笑)、「そういうロケーションだったら、別の市にありますよ」とか「ちょっと違うかもしれないけど、こういう場所ならありますよ」とご提案いただいて、朝から晩まですごい距離を運転してロケハンに付き合ってくださって。
杉本さん: 設楽町にある豊川市の野外施設にもお連れしたため、一日250kmくらいは車でまわりましたね(笑)。東三河は、ほの国東三河ロケ応援団や愛知県東三河広域観光協議会などもあって、もともと連携は取れています。
―豊川グルメでオススメはありますか。
前田監督: 豊川市や蒲郡市で食べて美味しいと思ったのが「メヒカリの唐揚げ」です。あとは、豊川市の鰻が美味しかったですね。いっけいさんがオススメしてくれた地元の鰻屋さんは、今まで食べた中で一番美味しかったです!他のお店にも行ってみたら、また別のタイプの鰻で、これはこれで美味しい(笑)。
いわゆる鰻というと、名古屋のひつまぶしのイメージが強かったので、豊川市だけでこれだけいろいろなバリエーションがあることに驚きました。今後も長くお付き合いしていきたいので、さらにディープな「ここ美味しいよ」というところに行ってみたいですね。
秋山さん: 豊川市の美味しいものはいろいろありますが、例えば「豊川いなり寿司」というネーミングで地域ブランド化しているいなり寿司は、鰻や味噌カツがのっていたりと、味いろいろ・工夫いろいろです。変わり種だと「油揚げとお米が使われていれば、豊川いなり寿司」という定義のもと、サクッと軽い食感の揚げに、ポン菓子やクリームをはさんだデザート感覚のものもあります。
また、豊川市が関東と関西の中間にあるためか、鰻の背開きだったら蒸す、腹開きだったら焼く、というのがごっちゃになっているんです。ちょっと関東風が食べたいな、関西風が食べたいなと思ったとき、豊川市に来れば、どちらも食べられる(笑)、というのは面白いところです。
―取材を通して、仲人さんや結婚相談所に対するイメージは変わりましたか。
前田監督: 正直、だいぶ変わりました。まず、仲人さんのお仕事は「お相手を見つける」のがメインだと思っていました。それも仕事の一つだとは思いますが、取材すればするほど、仲人さんが会員さんと一緒になって「結婚する準備を手伝う」のがメインだと気づきました。
今となってはとても恥ずかしいんですけど、別件でハウスメーカーのプロモーションを撮っていた時に「結婚相手を探すのは、物件選びに近い」と思って、仲人さんに伝えたんです。「そういう部分もありますよね」と優しく答えてくださったのですが……劇中の赤羽と同じで、すごく失礼ですよね(笑)。
この映画を観て、今までの結婚相談所のイメージはだいぶ変わるんじゃないかと思います。よくあるマッチングアプリでうまくいく人はそれでいいと思います。でも、それが難しいという人もやっぱりいる。一歩踏み出せない人にとっては赤羽みたいにゴリゴリ押してくれるような仲人さんが、迷って決めかねている人にはとことん寄り添って話を聞いてくれる結衣みたいな仲人さんが必要かもしれない。海外経験もあって高学歴で、自分よりレベルの低い人は……という人には「こういう人はどうなの?」と本当に結婚に必要な条件を気づかせてくれる十和子のような仲人さんがそばにいてくれたらいいのかもしれません。
―結婚の「ご縁」はもちろん、仲人さんと会員、仲人さん同士の出会いも「ご縁」ですね。監督は「ご縁」について、どのようにお考えですか。
前田監督: ただ待っているだけでは「ご縁」は生まれないのかなぁと思います。どこかで誰かが動き出した時に、「ご縁」が生まれ、出会いがあると。実際に我々もこの映画をつくるにあたって、いろいろな方面で動いたことで、観光協会さんや市の皆さんとの「ご縁」が生まれて、さらに地元の企業さんやエキストラに参加してくださった地域の方々に広がって……そうしたことが映画をどんどん豊かにしていったと思っています。
―この映画で伝えたかったことは、どんなことですか。
前田監督: いくつかあるうちの一つですが、今迷ったり、立ち止まったりしてる人がいたら、一歩踏み出してみてほしい。動くことで何かが変わるし「ご縁」も生まれる。また、それを支えてくれる人も現れる、と思っています。コロナでリモートができるなどいいこともありましたが、それとは別に、人と人とが実際に出会うことで、人生が豊かになるってことがあるんじゃないかと。
―上映後の手応えはどう感じていらっしゃいますか。
前田監督:「なんとなくほっこりした」とか「何かやってみようかなと思った」という感想をいただくのは、正直嬉しいです。伝えたかったことがちゃんと届いたなぁと。完成披露上映会を行った後、若い方から年齢が上の方まで観客の皆さんが笑顔で、この映画について話が弾んでいて、ロビー中がわいわい賑わっていたんです。一人でリモートをしていた時には感じられなかった、人と人とのあたたかい空気感を感じることができて「この映画は大丈夫だ」と思えました。
杉本さん: 私の家族・友人・職員など周りの方はみんな観ています!本当に評判がよくて、ほっこりする映画です。完成披露上映会の時も、上映後質問が途切れることなく出て、司会を務めた山﨑さんが「お時間ですので」と切り上げなければならないほどでした。とよかわ広報大使の渡辺いっけいさん主演なので、これからももっと盛り上げていきたいですね。
前田監督: 応援や提供をしてくださった企業さんのTwitterなどを見ると、豊川市さんを中心にすごく連携して、皆さん同士がリツイートし合っていて。愛知県全体でイベントとして映画を盛り上げてくれるのは、とてもありがたいです。
秋山さん: 劇中で「とよかわみー豚」を提供してくださったヤマグチファームさんがTwitterに長けていて、いろいろな方をリツイートされるので、リツイートがリツイートを呼んで、どんどん輪が広がりました。あと、個人的に思ったのは、監督さんがいろいろな方に絶対「いいね」を押されているんですよ(笑)。
お忙しいだろうに全部チェックされて。皆さん、つぶやけば監督さんが見てくれるというので、私も!僕も!つぶやこう!みたいな(笑)。監督さんの「いいね」のおかげでつぶやきが増えたのもあると思います。
前田監督: 心配なだけです(笑)。でも、そういうことがすべて映画の中に沁み出ているんでしょうね。自分で言うのもなんですが、よく「愛のある映画」だと言ってもらえるのは、皆さんのおかげだと思います。
―これからご覧になる方に一言お願いします。
前田監督: 結婚相談所を舞台にはしていますが、敷居の高い話ではなく、誰が観ても楽しんでもらえる作品になったと思っています。結婚相談所だけではないものがいっぱい詰まっているので、笑ってみたい、リラックスしてみたい、という気軽な気持ちでご覧いただけたら嬉しいです。
山﨑プロデューサー: 人間関係が希薄になっているといわれる中で、人とつながること、人と関わることがどれほど尊いか、ということをテーマにしています。そういうところが響くからこそ、観てくださった方があったかい気持ちになったとか、ほっこりできた、と言ってくださるのかなぁと。コロナもあって人との関わりが難しい時代だからこそ、人に会いたい、好きな人と一緒になりたい、そんなふうに思ってもらえたら嬉しいです。
杉本さん: 映画に関わらせていただいて、とてもありがたかったですし、一ファンとして何回も観ています。全国公開を機にどんどんこの映画が盛り上がって、豊川市のことも知っていただき、ロケ地巡りにもお越しいただけたら嬉しいです。ぜひ皆さんに観ていただきたいです!
映画の雰囲気そのまま!ロケ地巡りをしよう
映画を見た後のお楽しみは、ロケ地巡り。オール三河で撮影された本作に登場するロケ地には魅力がたっぷりです。あなたもロケ地を巡って映画の世界を体験してみませんか?