映画『異動辞令は音楽隊!』公開記念インタビュー|愛知県フィルムコミッション協議会

愛知県フィルムコミッション協議会

特集

2022.09.22 Thursday :
SPECIAL INTERVIEW 16

映画『異動辞令は音楽隊!』公開記念インタビュー

『ミッドナイトスワン』で日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞した内田英治監督の最新作『異動辞令は音楽隊!』が公開されました。原案・脚本・監督を手掛けた内田監督が、愛知県警察音楽隊のYouTube映像から着想を得たという今作は、豊橋市を中心とした東三河エリアがロケ地。『家族マニュアル』や『ミッドナイトスワン』など、これまで多くの作品を豊橋市で撮影してきた内田監督に、ロケ地の魅力をうかがいました。

話す人

映画監督
内田 英治 さん

―脚本のきっかけが愛知県警、ロケ地も愛知県ですね。

内田監督:
たまたま目にした警察音楽隊のフラッシュモブ演奏と制服のインパクトに惹かれて、脚本を書き上げました。その映像が愛知県警だと判明したのは、だいぶ経ってから。“愛知県警だから愛知ロケ”というわけではなかったので、偶然の一致に自分でも驚いています。

―実際に警察音楽隊を取材してみて、いかがでしたか。

内田監督:
3つの警察音楽隊を取材させてもらったのですが、専務隊もいれば兼務隊もいて、所在地も街中だったり山の上だったり……当たり前ですが、警察によって全然違うなぁというのが、第一印象。次に、どこを取材しても、隊員の方々の個性が強い(笑)。警察って個々の顔が見えづらいと思うのですが、個性的な警察官がたくさんいて、興味を惹かれました。人が面白いといろいろ聞きたくなっちゃいますね。渋川清彦さんが演じられた役は、実際に取材させてもらった方をモデルにしています。見た目は鬼警官みたいな感じで怖いんですけど、しゃべるとすごく優しくて、めちゃめちゃ音楽を愛してる。話を聞かせてもらおうとしたら、ちょうど仕事に行くところで「なんだよ、忙しいんだよ」みたいな。映画といっしょです(笑)。

―今回、豊橋市を中心とした愛知県・東三河エリアがロケ地のメインとなっています。

内田監督:
昔、テレビのADをやっていた頃「ダンス甲子園」の名古屋大会へ行ったり、ボイメン(名古屋発のエンターテインメント集団 BOYS AND MEN)のドラマ『キスのカタチ』を撮影したりと、もともと名古屋とはご縁がありました。映画を始めてからは、どこよりも愛知県で撮影していますね。(豊橋市出身の)平田満さん主演の短編映画『家族マニュアル』を豊橋市内で全編撮影したり、『ミッドナイトスワン』でアメリカ設定のシーン(豊橋市公会堂)を撮影したりと、もう何度も東三河で撮影しています。

―東三河の魅力とは。

内田監督:
僕のロケハンではよくあることなのですが、Aという撮影候補地へ行くと、その周辺でもっと魅力的なBという場所を見つけてしまうんです。都会だとAに行ったらAしかない。東三河には、A以外のBやCがたくさん見つかるのが魅力です。東三河エリアは、町全体に統一感があって、一つの大きなセットみたいな感じがします。僕は都会的なものはあまり好きじゃないので、こういう古い情緒が感じられる個性的な町が好きですね。

―東三河の撮影でやりやすさを感じる部分は。

内田監督:
人が大らかで優しく、映画撮影に対して理解があるところですね。僕らはその土地にお邪魔している立場なので、自分たちも協力的な雰囲気をつくっていかないといけないんですけど、東三河では皆さん協力的で、嫌な思いをしたことがないんです。今回も、主人公が住む家の小屋を探していたら、畑の中にすごくいい感じの場所を見つけて「あそこの小屋いいですよね」と言うと、フィルムコミッションの方が車を止めて、持ち主と交渉してくれたんです。持ち主の方もその場で「いいですよ」と(笑)。借りられるかどうかもわからないのに、そんな無茶なリクエストを聞いてもらえるのは、ほかにないです。地元の方に「どうしてこういう雰囲気なんですかね?」と聞くと「食べ物が豊富だからね」と皆さんおっしゃるんですよ。

―内田監督がロケ地に求めることは何ですか。

内田監督:
「リアリティー」ですね。家一つとってもハウススタジオではなくて、実際に使われている家で撮影したいと思います。例えば、今回の主人公の家は、フィルムコミッションの方のおばあちゃんの家なんですよ(笑)。すっごく変わった造りで、郊外にこんな面白い家があるんだぁ、おばあちゃんがつくり上げた個性がにじみ出ていていいなぁと思い、使わせていただきました。

―ロケ地で印象に残っている食べ物は。

内田監督:
蒲郡市長からいただいた蒲郡みかんは美味しかったですね。あとは、ロケハンの時に、フィルムコミッションの方が予約してくれた豊橋市の海鮮料理屋さんがとても美味しくて、撮影の時に再訪しました。この作品は、一か月間豊橋市に泊まっての完全合宿だったので、休みの日はスタッフや役者さんたちの間でお店情報が行き交っていました。美味しいものを食べたり、サウナへ行ったり、旅行気分でのんびりできましたね。

―ロケ地のエピソードについてお聞きします。「小野田バス停」の雰囲気が素敵でした。

内田監督:
バス停は、実は休憩所で、目の前にあった広場にバス停を作るつもりで、広場を見に行ったんです。そうしたら、目の前に休憩所があって、そこでおばあちゃんがみかんを売っている。「この雰囲気めっちゃいいよね」と、休憩所をバス停に仕立てました。映画に出ていたおばあちゃんは、現地の方です。リアリティー半端ない(笑)。そういう愛知の楽しみ方をしています。

―「豊橋広小路通り」で渋滞を走り抜けるシーンは、とても爽快でした。

内田監督:
警察の協力もあって、公道を丸一日止めて撮影しました。90台の車を地元の方が乗ってきてくれて、お弁当を食べながら誰一人文句も言わず付き合ってくれました。ほかの場所では、まずできないと思いますね(笑)。

―「豊橋駅東口サークルプラザ」での演奏シーンは、迫力がありました。

内田監督:
炎天下での撮影で、暑くて大変でした。役者さんが勢揃いして、人だかりができて大変なことになるかなぁと心配していましたが、不思議と野次馬がほとんどおらず(笑)、スムーズに撮影が進みました。地元の方のおおらかさに助けられましたね。

―「形原漁港」大漁旗がはためく中、ユーモラスな演出にくすりとなりました。

内田監督:
地元の方に協力いただいて舟を真横につけてもらったのですが、潮が引いたら、舟が全く見えなくなってしまって、困りました(笑)。阿部さんには、本当は海に落ちてもらうつもりだったのですが、引き上げるのも大変だし、あまり笑えないよね? ということで、ちょっとしたボックスに落ちてもらうことになりました。ボックスまでの歩数を何度も確認するのが、生真面目な阿部さんらしかったですね。

―「東田球場」でマーチングを練習するシーンもリアリティーがありました。

内田監督:
警察音楽隊の方に取材した時に、近所のおじさんが「うるさい!」とどなりこんでくるので、楽器を使わず体育館で練習しているエピソードを聞いて、脚本に落とし込んだんですよ。

―内田監督のお気に入りのシーンはありますか。

内田監督:
ナンバリングでリズムをとる場面は好きですね。エキストラの方が電卓でリズムをとったり、のってきてくれて、現場で生まれたシーンです。自分が考えていなかったことが、現場で生まれるのはすごくいいですよね。僕の映画は、基本的に「意見求ム」っていうスタンスです。スタッフが50人いれば50人分の頭脳があるんだから、それを活かしたほうが絶対いいと思っています。

―この作品で監督が届けたかったメッセージは。

内田監督:
メッセージっていうのは特にないんです。今は時代の転換期。時代に取り残される人も当然いる。でも「取り残された、だからどうした?」ということを描きたかった。そういう状況になったら、また別の新しいことを見つければいいんじゃない? と。言ってみれば、いま若い子たちだって、50年後には同じ状況になるわけですから。老いは万人に平等にやってきます。たまたま今回の主人公は、音楽に出合って幸せになった。だから(そういう状況になったら)何かを見つければいいんじゃない? という映画です。

―映画の反響はいかがですか。

内田監督:
もともと“応援映画”のつもりでつくったわけではないので、正直びっくりしていますが、「へこたれてたけど、頑張ろうと思います!」とか、メッセージをいただきますよ。あと、まあまあ多いのが「『ミッドナイトスワン』より好きです」っていう……。(全員爆笑)それも嬉しいですけどね。応援映画って、今までつくったこともなかったし、そもそも興味もなかったし、今でも全く興味ないんですけど……「頑張る気になった!」っていう感想をいただけるのは、素直に嬉しいです。僕は“一人の男の挫折と再生”を描きたかった。それを“応援メッセージ”として受け取ってくれる人がいるんだなぁというのは、意外でした。

―最後に、愛知県の「ココ」がいい!

内田監督:
とにかく、ごはんがおいしい!台湾ラーメンって愛知なのか? と毎回思いながらも、なぜか味仙は必ず行きますね。矢場とんの高級店(わらじや)も何回か行きました。それと、人が好きですねぇ。県民性なのかわかりませんけど、都会にありがちなツンツンしていない。都会って、みんなツンツンしてるでしょ、ぶつかってくるし(笑)あとは、東京から近いのも魅力です!

映画の雰囲気そのまま!ロケ地巡りをしよう

映画を観た後のお楽しみは、ロケ地巡り。愛知県豊橋市を中心に、東三河エリアで撮影された本作。なじみのある施設や通りに加えて、レトロで風情のあるバス停や豊かな自然なども見どころです。

ロケ地マップ こちらから↓
https://aichi-film.jp/wp-content/uploads/2022/08/%E6%98%A0%E7%94%BB%E3%80%8C%E7%95%B0%E5%8B%95%E8%BE%9E%E4%BB%A4%E3%81%AF%E9%9F%B3%E6%A5%BD%E9%9A%8A%E3%80%8D%E3%83%AD%E3%82%B1%E5%9C%B0%E3%83%9E%E3%83%83%E3%83%97-.pdf

映画『異動辞令は音楽隊!』

STORY

犯罪捜査一筋30年の鬼刑事・成瀬司は部下に厳しく、昭和さながら犯人逮捕のためなら法律すれすれの捜査も辞さない男。一人娘の法子からはとうに愛想をつかされている。高齢者を狙った「アポ電強盗事件」が相次ぐ中、勘だけで疑わしい者に令状も取らず過激な突撃捜査をしていたが、そのコンプライアンスを無視した行動が仇となり、突然上司から異動を命ぜられる。刑事部内での異動だろうと高をくくっていた成瀬だったが、異動先はまさかの<警察音楽隊>だった……。

CAST

阿部寛、清野菜名、磯村勇斗、高杉真宙、板橋駿谷、モトーラ世理奈、見上愛、岡部たかし、渋川清彦、酒向芳、六平直政、光石研、倍賞美津子